唇のひび割れは、特に冬や乾燥した環境でよく見られる問題です。水を飲むことでこの現象を予防または和らげることができるという話を耳にすることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか?この疑問について詳しく見ていきましょう。
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水分摂取量を増やすことで唇のひび割れは改善するのか?
唇のひび割れが脱水によって引き起こされるのであれば、水を多く飲めば解決するのではないか、という考えは直感的には理にかなっています。
そもそも唇は、体のほかの部分と比べて非常に繊細な構造をしています。汗を分泌する汗腺がなく、皮脂を作る皮脂腺もほとんどないため、本来皮膚を守るはずの皮脂膜がほぼ存在しません。その上、唇の表皮は非常に薄いため、水分が失われやすく、乾燥しやすいのです。
こうした背景から、「水を飲むことで唇の乾燥を防げる」と考えるのは自然ですが、実際にはそう単純ではありません。
確かに、水を飲むことは体全体の機能を維持するうえで不可欠であり、皮膚の健康にも一定の役割を果たします。一般的に、1日に約1.5リットルの水を飲むことが推奨されています。摂取された水分は血流にのって体の各細胞へと届けられ、肌の潤いにも関与します。しかし、この水分が特に唇に優先的に供給されるわけではありません。
むしろ、体はまず脳、心臓、腎臓といった生命維持に関わる臓器を優先的に潤すため、唇のような末端部分には必ずしも十分な水分が行き渡るとは限らないのです。
現在のところ、水分摂取が唇のひび割れに与える直接的な影響を裏付ける科学的証拠は見つかっていません。
唯一の関連研究として、水分摂取が皮膚全体に及ぼす影響を調査したものがあります。この研究では、80人の被験者に対し、42日間にわたって通常の水分摂取量に1リットルの水を追加するよう指示しました。その後、皮膚の水分量を前腕の部位で測定したところ、平均16.3%の水分量の増加が確認されました。しかし、この研究では唇に対する影響は調査されておらず、唇の乾燥が改善するかどうかは不明のままです。
Sources
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PARISH L. & al. Nutrition and water: drinking eight glasses of water a day ensures proper skin hydration—myth or reality? Clinics in Dermatology (2010).
LUGOVIC-MIHIC L. & al. Differential Diagnosis of Cheilitis - How to Classify Cheilitis? Acta clinical Croatica (2018).
PARK S. G. & al. Relationship between lip skin biophysical and biochemical characteristics with corneocyte unevenness ratio as a new parameter to assess the severity of lip scaling. International Journal of Cosmetic Science (2021).
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