妊娠中の女性は、自分自身と赤ちゃんの健康を守るために、食事、運動、化粧品など多くの制約を受けます。ネイルポリッシュも、妊娠中の使用がよく懸念される化粧品の一つですが、実際のところどうなのでしょうか?
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妊娠中にネイルポリッシュを使っても大丈夫?
妊娠中は、できることが徐々に制限されていくため、もどかしさを感じることがあるかもしれません。化粧品も例外ではなく、妊娠中に使用するとリスクがある成分を含むものもあります。ネイルポリッシュもその一つであり、多くの専門家が妊娠中の使用を控えるよう推奨しています。
その理由の一つは、従来のネイルポリッシュには胎児に有害な成分が含まれており、吸入することでリスクを伴う ことです。母体の血流に入った化学物質は胎盤を通じて赤ちゃんにも届く可能性があります。実際に、妊娠4週目には母子間の血液循環が始まる ため、妊娠のごく初期から注意が必要です。
特に、妊娠中に避けるべき成分として知られているのが ホルムアルデヒド(formaldéhyde) です。ホルムアルデヒドは、欧州で「ヒトに対する発がん性の可能性がある」と分類されており、内分泌かく乱物質(ホルモンバランスを乱す可能性のある物質)とも考えられています。
また、トルエン(toluène) も多くのネイルポリッシュに含まれる成分の一つです。これは揮発性の溶剤で、妊娠中の悪阻(つわり)を悪化させる可能性があるとされています。さらに、最近の研究では 妊娠中に高濃度のトルエンにさらされると、赤ちゃんが重度の脳異常(無脳症の一種である水無脳症)を持って生まれるリスクがある という指摘もあります。研究者自身もこの因果関係については完全には確証していませんが、安全のために 「予防原則(プリコーション・プリンシプル)」を適用し、使用を避けるのが望ましい でしょう。
さらに、以下の成分も妊娠中は避けるべきとされています。
フタル酸エステル(phtalates)
ホルムアルデヒド樹脂(formol)
パラベン(parabènes)
カンフル(camphre)
ベンゾフェノン(benzophénone)
キシレン(xylène)
スチレン(styrène)
コロホン樹脂(colophane)
妊娠中でも使える「ナチュラルネイルポリッシュ」とは?
妊娠中のネイルポリッシュとしては、ナチュラル成分をベースにしたもの が推奨されます。これらは「3 free」「5 free」「8 free」といった表示があり、この数字は 取り除かれた有害成分の数 を示しています。
一般的に、ナチュラルネイルポリッシュは、従来の溶剤の代わりにジャガイモ、キャッサバ(タピオカの原料)、トウモロコシ、サトウキビなどの植物由来成分 を使用しています。また、一部の製品には爪に良い美容成分が配合されているものもあります。例えば、
緑茶 → 爪を優しく保護する
ドリアン → 爪のケラチンを強化
アボカド → 爪を保湿・栄養補給
とはいえ、妊娠中のネイルポリッシュの使用はあくまで控えめに し、長期間つけっぱなしにしないことが推奨されます。また、塗った後は 手をしっかり洗い、余分な成分が皮膚につかないよう注意 しましょう。
除光液(リムーバー)の選び方
ネイルポリッシュを落とす際には アセトン不使用のリムーバー を選ぶことが重要です。
アセトンは揮発性が高く、使用時にその蒸気を吸い込むリスクが避けられません。吸入すると、妊婦自身の神経系に悪影響 を及ぼすだけでなく、赤ちゃんの発育にも影響を与える可能性があります。さらに、アセトンは呼吸器官を刺激する ため、長時間の使用は避けるべきです。
また、アセトンの代替として使われる 酢酸エチル(アセテート・エチル、acétate d’éthyle) にも注意が必要です。これも呼吸器官を刺激し、つわりを悪化させる 可能性があるため、妊娠中の使用はできるだけ控えた方がよいでしょう。
まとめ:妊娠中のネイルケアのポイント
✔ ホルムアルデヒドやトルエンなどの有害成分を含まないネイルポリッシュを選ぶ
✔ 「3 free」「5 free」「8 free」などの表示があるナチュラルネイルポリッシュを選ぶ
✔ 頻繁な使用を避け、爪に負担をかけないようにする
✔ 使用後は必ず手を洗い、余分な成分を落とす
✔ アセトンフリーの除光液を使用する(ただし酢酸エチルにも注意)
妊娠中でもおしゃれを楽しみながら、赤ちゃんと自分の健康を守るために、成分をしっかりチェックして安全なネイルケアを心がけましょう
Sources
FANUCCHI M. & al. Formaldehyde exposure during pregnancy. The American Journal of Maternal Child Nursing (2015).
AKYOL S. & al. Hydranencephaly in a newborn due to occupational toluene exposure during pregnancy: a case report. Acute and Critical Care (2022).
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