妊娠中、女性の体は大きな変化を経験します。これらの変化は主にホルモンの変動によるもので、頭皮にも影響を及ぼします。ここでは、妊娠が髪に与える影響について詳しく解説します。
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妊娠とホルモン:体内では何が起こるのか?
妊娠が体に大きな影響を与えるのは、ホルモンの活動が劇的に増加するためです。特にエストロゲンの分泌量は通常の1,000倍にまで増加することがあります。
エストロゲンは、黄体(受精した卵胞) によって生成され、細胞の増殖を促進します。特に子宮の拡張を助け、赤ちゃんが成長するスペースを確保します。また、血液量の増加を促し、胎児が必要とする栄養や酸素をしっかり供給できるようにします。
妊娠中にはプロゲステロンの分泌も大幅に増加します。このホルモンは、妊娠の維持に重要な役割を果たし、流産のリスクを低減すると考えられています。いくつかの研究では、流産の原因の一つとしてプロゲステロン不足が指摘されています。さらに、エストロゲンと協力して乳腺の発達を促し、母乳の準備を整える作用もあります。
ホルモン変動が髪に与える影響
妊娠中、多くの女性は髪の質や見た目が良くなったと感じることがあります。これは、エストロゲンとプロゲステロンの増加によるものです。
エストロゲンは、頭皮にある特定の受容体と結合し、毛髪成長サイクルの「成長期(アナゲン期)」を延長する作用があります。アナゲン期は、髪が最も活発に成長する段階であるため、妊娠中の女性の多くは髪が早く伸び、抜けにくくなると感じるのです。
一方、プロゲステロンは5αリダクターゼ(5-alpha reductase)という酵素の活動を抑制します。この酵素は、テストステロンをジヒドロテストステロン(DHT)に変換する働きを持ちます。DHTは毛包に作用し、ヘアサイクルを短縮させることで抜け毛を促進するため、妊娠中はDHTの影響が抑えられ、髪が抜けにくくなるのです。
髪のツヤと皮脂分泌の変化
プロゲステロンは、頭皮の皮脂腺の受容体に結合することで、皮脂の分泌を増加させます。この結合により、プロテインキナーゼC(PKC)という酵素が活性化され、ホスホリパーゼA2(PLA2)の働きを促進します。PLA2は細胞膜のリン脂質を分解し、遊離脂肪酸やリゾリン脂質を生成します。これらの成分は皮脂の前駆物質となり、髪をよりツヤのある状態にします。そのため、多くの妊婦は髪がしっとりし、輝きを増したと感じるのです。
個人差について
ただし、すべての女性が同じ変化を経験するわけではありません。ホルモンの影響の受けやすさには個人差があり、体内で分泌されるホルモンの量も人によって異なります。そのため、髪に明らかな変化を感じる女性もいれば、ほとんど変化を実感しない女性もいます。
Sources
EKMEKCI T. & al. The changes in the hair cycle during gestation and the post-partum period. Journal of the European Academy of Dermatology and Venereology (2014).
CASTELO-SOCCIO L. & al. A review of the use of biotin for hair loss. Skin Appendage Disorders (2017).
MECZEKALSKI B. & al. Hormonal effects on hair follicles. International Journal of Molecular Sciences (2020).
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