化粧品のpH値の測定は、製剤過程においてに重要なステップです。消費者の安全を保証し、製剤の安定性を維持し、ケアの効果を確保するためには、製品のpH値が適切で、明確に定義された範囲内にあることが必要だからです。そのために、pH調整剤は使用されます。この記事ではpH調整剤について紹介します。
化粧品におけるpH調整剤の役割は何か?
pHとは何か?肌への影響は?
pH(水素イオン指数)は、溶液や表面の酸性またはアルカリ性を示す指標です。これは0から14までのスケールで表され、H⁺(水素イオン)の活動性を示しており、その濃度と比較できます。25°Cでの水性環境では、中性の状態がpH7(または6.6〜7.3)であり、7より低い場合は酸性、7より高い場合はアルカリ性と分類されます。化粧品においてpHは重要な概念で、製品のpHが過度に酸性またはアルカリ性であると、肌に強い刺激を引き起こす可能性があります。
皮膚のpHはわずかに酸性で、通常4.7から5.75の範囲にあります。
皮膚の自然な酸性は、皮脂と汗からなる酸性皮膜(保湿皮脂膜)によるもので、この膜は皮膚バリアの恒常性、バリアの保全、抗菌防御能力に重要な役割を果たします。また、角質層の重要な脂質であるセラミドは、pH依存酵素によって酸性のpHで合成されます。皮膚のpHが乱れると、バリア機能の弱体化や皮膚マイクロバイオームの不安定化、肌荒れなどが発生しやすくなります。
スキンケア製品の製造においてpH調整剤を使用する理由
肌の生理学と自然な酸性度を尊重するために、化粧品は製品の種類や目的に応じて、一般的にpH4.5から7の範囲で調整されています。たとえば、セラムやローション、フェイスクリームはpH4.5に近い値に設定されることが多く、洗浄製品はpH7まで許容されることがあります。こうしたpH範囲を守るためには、pH調整剤(pHアジャスター)が必要です。
pH調整剤の主要な役割は、皮膚に適した酸塩基バランスを達成するためにpHを調整することです。
この役割により、以下のような効果を発揮します:
化粧品の安定性を高める
pHの変動は、化粧品の有効成分に影響を与え、分解や酸化、沈殿を引き起こす可能性があります。pH調整剤はスキンケア製品の安定化に寄与し、使用期間中も製品の特性と効果が維持されます。スキンケア製品の安全性の向上
刺激や不快な反応を避けるためには、肌に塗布される製品のpHが肌に適したものであることが重要です。pH調整剤は、化粧品が肌に安全なpH範囲内で保たれるようにします。有効成分の効果を高める
果実酸(AHA)やビタミンCのような成分は特定のpH範囲内でのみ効果を発揮します。さらに、ある成分が他の成分と適切なpHで相互作用することで効果が発揮されます。pH調整剤の役割は、各有効成分が相互に作用しながら、その機能を最大限に発揮できる環境を整えることです。微生物汚染の防止
pHは防腐剤の働きに大きく関わっています。pHが極端に高すぎたり低すぎたりすると、防腐剤の効果が損なわれ、製品内での細菌や真菌の繁殖リスクが高まります。pH調整剤は、防腐剤が完全に機能するための適切な環境を維持します。スキンケア製品の官能的特性への影響
スキンケア製品のpHの変動は、製品のテクスチャーや粘度、色、香りに変化をもたらすことがあります。pH調整剤によりpHを一定に保つことで、化粧品の外観や使用感を維持します。
化粧品に使用されるpH調整剤は、主に水に完全には解離しない弱酸や弱塩基です。例として、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸、ホウ酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、尿酸、また水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、アルカノールアミン(エタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン)などがあります。Typologyでは、特にクエン酸(INCI:Citric Acid)、乳酸(INCI:Lactic Acid)、クエン酸ナトリウム(INCI:Sodium Citrate)、および水酸化ナトリウム(INCI:Sodium Hydroxide)を使用し、スキンケア製品のpHを調整しています。
参考文献
DRAELOS Z. K. 化粧品:概要。 現在の皮膚科学の問題 (1995年)。
BRAUN-FALCO O. & al. 洗剤が皮膚のpHに及ぼす影響とその結果. 皮膚科の臨床 (1996).
YOSIPOVITCH G. 他 皮膚のpH:基礎科学から基本的なスキンケアへ。Acta Dermato-Venereologica(2013)。
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