口角炎またの名を**口角びらん性口唇炎**は、唇の片側または両側の口角に炎症が生じる状態です。触れると痛みを伴う赤みが現れ、場合によっては強い痛みを感じることもあります。その後、亀裂(ひび割れ)や痂皮(かさぶた)が形成されることがあります。
口角炎の原因は多岐にわたります。詳しく見ていきましょう。
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口角炎はどのようにして発症するのか?
口角炎の主な原因とは?
口角炎の有病率は、**2023年の米国で0.7%**と推定されています。見た目がやや衝撃的で痛みを伴うことが多いこの炎症には、いくつかの要因が関係しています。
1. 接触皮膚炎(アレルギー反応)
口角炎の約20%は接触皮膚炎によるものです。これは、唇が特定の物質に触れることでアレルギー反応を引き起こし、炎症が発生するものです。
主な原因物質:
ニッケル(歯列矯正器具などに含まれる)
食品(香料や保存料など)
歯磨き粉・マウスウォッシュ
リップバーム・口紅
チューインガム
このアレルギーの診断は、医師によるパッチテスト(貼付試験)で確認できます。原因物質を避けることで、口角炎は改善します。
2. 感染症(カンジダ菌・細菌・ウイルス)
口角炎の大部分は感染症によるものです。
主な病原体:
カンジダ菌(Candida albicans):口腔内の常在菌だが、口角の組織に侵入すると炎症を引き起こす。
細菌(黄色ブドウ球菌・溶血性連鎖球菌):カンジダ菌が先行感染し、その後二次的に細菌感染が起こるケースが多い。
ウイルス(単純ヘルペスウイルス:HSV-1, HSV-2)
感染症のリスクを高める要因:
口腔衛生が不十分
免疫力の低下(糖尿病、HIV感染、抗がん剤治療など)
補足データ:
カンジダ菌は93%の口角炎で検出されるが、単独の原因として特定されるのは20~50%。
つまり、カンジダ菌が関与しているケースは多いが、それだけが原因とは限らない。
3. シェーグレン症候群(Sjögren症候群)
シェーグレン症候群の患者では、最も頻繁にみられる口腔病変が口角炎であるとされています。
シェーグレン症候群とは?
自己免疫疾患の一種で、**口腔乾燥(ドライマウス)と涙の分泌低下(ドライアイ)**が特徴。
唾液腺がリンパ球に破壊されることで唾液の分泌が減少し、口内が乾燥。
口唇の乾燥 → 亀裂発生 → 口角炎の発症につながる。
データ:
シェーグレン症候群の患者2,426人を対象にした研究では、20~40%が口角炎を発症していた。
4. 冷気・乾燥した空気への曝露
冬の寒さや乾燥した空気は、唇の水分量を奪い、バリア機能を低下させます。その結果:
唇の表面に小さなひび割れが生じる
ひび割れ部分から病原体が侵入し、感染が成立
冬に唇が荒れることが多いのは、このメカニズムによるものです。
5. 習慣的な行動(リップライジング:唇を舐める癖)
唇を舐める癖(リップライジング)があると、かえって唇が乾燥する。
唾液に含まれる消化酵素(リパーゼなど)が皮膚を分解し、バリア機能を低下させる。
その結果、感染が起こりやすくなる。
対策:
リップバームを使用する
リップバームは、唇の表面に保護膜を作り、水分蒸発を防ぐ効果がある。
6. 薬の副作用
特定の薬剤が口角炎を引き起こすことがある。
代表的な薬剤:
イソトレチノイン(ニキビ治療薬):皮脂分泌を大幅に抑え、唇の乾燥を引き起こす。
ステロイド(湿疹・アレルギー治療薬):皮膚の免疫を低下させ、感染を引き起こしやすくする。
対策:
乾燥を防ぐため、こまめにリップクリームを使用することが推奨される。
7. 加齢(老化による影響)
加齢に伴い、口元の構造に変化が生じる。
顔のボリューム減少 → 口角の「ほうれい線(マリオネットライン)」が深くなる。
歯ぐきの退縮や歯の喪失により、唇の形が変わる。
口角の窪みに唾液がたまりやすくなり、湿潤環境が病原体の繁殖を助長する。
高齢者に口角炎が多い理由の一つ。
Sources
LUGOVIC-MIHIC L. & al. Differential Diagnosis of Cheilitis - How to Classify Cheilitis? Acta clinical Croatica (2018).
SINDLE A. & al. Art of prevention: Practical interventions in lip-licking dermatitis. International Journal of Women's Dermatology (2020).
ZITO P. & al. Angular Cheilitis. StatPearls (2023).
HAFSI W. & al. Cheilitis. StatPearls (2023).
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